上 海 の 街 角 で


作詩 佐藤惣之助  作曲 山田栄一
昭和13年
1 リラの花散る キャバレーで逢うて
  今宵別れる 街の角
  紅の月さえ まぶたににじむ
  夢の四馬路が 懐しや

 「おい、もう泣くなよ。あれをごらん
 ほんのりと紅の月が出ているじゃないか
 何もかもあの晩の通りだ
 去年はじめて君に逢ったのも
 ちょうどりラの花の咲く頃
 今年別れるのも、またリラの花散る晩だ。
 そして場所はやっばりこの四馬路だつたなァ。
 あれから一年、激しい戦火をあびたが、
 今は日本軍の手でたのしい平和がやって来た。
 ホラおきき、ネ、昔ながらの
 支那音楽も聞こえるじゃないか。」


2 泣いて歩いちゃ 人目について
  男船乗りゃ 気がひける
  せめて昨日の 純情のままで
  涙かくして 別れよか


 「君は故郷へ帰って、たった一人の
 お母さんと人事に暮し給え
 僕も明日からやくざな上海往来をやめて
 新しい北支の天地へ行く、そこには
 僕の仕事が待っていてくれるんだ。
 ねえ、それがおい互いの幸福だ。
 サァ少しばかりだが、これを船賃のたしに
 して日本へ帰ってくれ。やがて十時だ、
 汽船も出るからせめて埠頭まで送って行こう。」


3 君を愛して いりゃこそ僕は
  出世しなけりゃ 恥しい
  棄てる気じゃない 別れてしばし
  故郷で待てよと いうことさ


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