からたち日記 作詩 西沢 爽 作曲 遠藤 実 昭和33年 |
1 こころで好きと 叫んでも 口ではいえず ただあの人と 小さな傘を かたむけた ああ あの日は雨 雨の 小径に 白い仄(ほの)かな からたち からたち からたちの花 「幸せになろうね、あのひとはいいました。 私は小さくうなずいただけで胸がいっぱいでした」 2 くちづけすらの 想い出も のこしてくれず 去りゆく影よ 単衣の袖を かみしめた ああ あの夜は霧 霧の 小径に 泣いて散る散る からたち からたち からたちの花 「このまま別れてしまってもいいの、でもあの人はさ みしそうに目をふせて、それから思い切るように霧 の中に消えていきました。さよなら初恋、からたち の花が散る夜でした」 3 からたちの実が 実っても 別れた人は もう帰らない 乙女の胸の 奥ふかく ああ 過ぎゆく風 風の 小径に いまは遙かな からたち からたち からたちの花 「いつか秋になりからたちには、黄色の実がたくさん 実りました。今日もまた私はひとりこの道を歩くので す。きっとあの人が帰ってきそうな、そんな気がして ……」 |