| 戦 友 作詩 真下飛泉 作曲 三善和気 明治38年 |
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| １ ここはお国を何百里 離れてとほき満洲の 赤い夕日にてらされて 友は野末の石の下。 ３ ああ戦の最中に 隣におりし此の友の 俄かにハタと倒れしを 我は思はず駈け寄りて。 ５ 折から起る突貫に 友はやうやう顔上げて 「お国の為だ構はずに 後れて呉な」と目に涙。 ７ 戦すんで日が暮れて さがしにもどる心では どうぞ生てゐて呉れよ 物なと言へと願ふたに。 9 思へば去年船出して お国が見えずなった時 玄海灘で手を握り 名を名乗ったが始めにて。 11 肩をだいては口ぐせに どうせ命は無いものよ 死んだら骨を頼むぞと 言ひかはしたる二人仲。 13 くまなくはれた月今宵 心しみじみ筆とって 友の最後をこまごまと 親御へ送る此手紙。 |
２ 思へばかなし昨日まで 真先かけて突進し 敵を散々懲らしたる 勇士はここに眠れるか。 ４ 軍律きびしき中なれど 是が見捨てて置かれうか 「しっかりせよ」と抱起し 仮繃帯も弾丸の中。 ６ あとは心は残れども 残しちゃならぬ此身体 「それぢゃ行くよ」と別れたが 長の別れとなったのか。 ８ 空しく冷えて魂は 故郷へ帰ったポケットに 時計ばかりがコチコチと 動いてゐるも情けなや。 10 それより後は一本の 煙草も二人わけてのみ ついた手紙も見せ合て 身の上ばなしくり返し 12 思ひも寄らず我一人 不思議に命ながらへて 赤い夕日の満洲に 友の塚穴掘らうとは。 14 筆の運びはつたないが 行燈のかげで親達の 読まるる心思ひやり 思はずおとす一雫。 |
