月 の 法 善 寺 横 丁 作詩 十二村哲 作曲 飯田景応 昭和35年 |
1 包丁一本 さらしに巻いて 旅へ出るのも 板場の修業 待ってて こいさん 哀しいだろが あゝ 若い二人の 想い出にじむ 法善寺 月も未練な 十三夜 「こいさんが、わてをはじめて法善寺へつれて 来てくれまったのは『藤よ志』に奉公に上がっ た晩やった。はよう立派な板場はんになりいや 云うて、長いこと水掛不動さんにお願いしてく れはりましたなあ。あの晩から、わては、わて は、こいさんが好きになりました」 2 腕をみがいて 浪花に戻りゃ 晴れて添われる 仲ではないか お願い こいさん 泣かずにおくれ あゝ いまのわてには 親方はんには すまないが 味の暖簾にゃ 刃が立たぬ 「死ぬ程苦しかったわてらの恋も、親方はんは 許してくれはった。あとはみっちり包丁の修業 をつんで一人前の料理人になることや。な、こ いさん。待っててや。ええな、こいさん」 3 意地と恋とを 包丁にかけて 両手あわせる 水掛不動 さいなら こいさん しばしの別れ あゝ 夫婦善哉 想い出横丁 法善寺 名残りつきない 灯がうるむ |