花 街 の 母

作詩 もず唱平  作曲 三山 敏
昭和48年 
1 他人(ひと)にきかれりゃ お前のことを
  年のはなれた 妹と
  作り笑顔で 答える私
  こんな苦労に ケリつけて
  たとえひと間の 部屋でよい
  母と娘の 暮らしが欲しい


「いくらなじんだ水でも 年頃の娘のいる左褄、住みにくうございます。浮き名を流した昔もありましたが… ああ、あのひと、私を残して死んだあのひとを恨みます」


2 厚い化粧に 憂いをかくし
  酒で涙を ごまかして
  三味にせかれて つとめる座敷
  あれが子持ちの 芸者だと
  バカにされても 夢がある
  それはお前の 花嫁姿


「女の盛りはアッという間です。若い妓の時代、私はもううば桜、出る幕ないわ。でももう少しこの花街に私を置いて下さい。せめてあの娘にいい花婿が見つかりますまで」


3 何度死のうと 思ったことか
  だけど背で泣く 乳飲児の
  声に責められ 十年過ぎた
  宵に褄とる 女にも
  きっといつかは 幸福(しあわせ)が
  来ると今日まで 信じて生きた


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